産業衛生専攻医の実務研修

専門医試験の受験資格取得のためには、研修施設または研修協力施設において、 指導医の下で最低9単位(単位の詳細については別に定める)の実務研修を修了し、 受験時の産業医能力の要求水準に到達していることが必要である。
社会医学系専門医取得者は、専攻医試験免除で専攻医登録が可能で、 主分野が産業・環境であった者は申請時に6単位を付与し、 主分野が産業環境以外の者および経過措置社会医学系専門医及び指導医は、申請時に3単位を付与する。
実務研修の単位認定有効期間は、産業衛生専攻医登録日以降の期間とする。

社会医学系専門医取得専攻医が産業衛生専攻医登録以前に行った産業医実務研修の記録の取り扱いと、
専攻医が社会医学系専攻医時代に経験した経験を27項目の産業衛生実務研修に含めることが出来る。
ただし、提出できる実務研修記録(R8レポート)の上限は主分野が「産業・環境」の者は18枚まで、
それ以外の主分野の者および社会医学系経過措置指導医(専門医)は9枚までとする。
上記の実務研修記録(R8レポート)の指導は専攻医が社会医学系指導医、あるいは産業衛生指導医のいずれかに依頼する。

*単位について以下のように定めるが、全単位の過半数を必須単位で取得すること。
一 (必須単位)週1日・年間の産業医実務を1単位と換算する
  • 産業医実務は週3日以上で年間3単位となり、週4日以上でも週3日として単位換算すること
二 (補助単位)
  • 日本産業衛生学会、産業衛生全国協議会の出席 1回につき0.2単位
  • 日本産業衛生学会、産業衛生全国協議会での発表 1回につき0.3単位
  • 産業衛生学会主催の地方会・研究会の出席 1回につき0.1単位
  • 日本産業衛生学会、産業衛生全国協議会、地方会等で取得のK単位※
      K1単位につき0.1単位(各会につき0.2単位まで)
     ※K単位は社会医学系専門医協会の講習単位です。
  • 指定セミナー参加 1回につき0.1単位
  • 【指定セミナー】
       ・産業医学実践研修(産業医科大学主催)
       ・産業医プロフェッショナルコース(日本産業衛生学会産業医部会主催)
       ・OHAS(産業保健に関する実践的講習)(労働衛生会館主催)

  • 委員会認定の研究会参加 1回につき0.1単位
  • 産業医学基本講座の修了 1単位
  • 産衛誌・JOHの筆頭著者  1回につき1単位
  • Environmental and Occupational Health Practice(EOHP)筆頭著者 1回につき1単位
  • 産衛誌・JOHの査読  1回につき0.2単位
但し、これらの補助単位は1年間で最大2単位まで取得可能とする。
*以上の単位計算を基本とし、専攻医が1年間で取得可能な単位上限は3単位までとする。
学会・団体活動等の実績の単位記録で1年間の単位計算ができます。

(1) 研修項目

専攻医は、指導医のもとで以下のすべての項目について、実務研修を受けなければなりません。

  1. 産業保健体制の構築
  2. 産業保健活動の計画・目標の立案と評価
  3. 社内部門・外部機関との連携
  4. 衛生委員会等への参画
  5. 企業や職場の把握、職場巡視の実施
  6. 労働安全衛生マネジメントシステムの構築・運用、産業保健活動の文書化
  7. 労働衛生教育の実施とリスクコミュニケーションの推進
  8. 粉じん・アスベストによる健康障害防止対策
  9. 化学物質による健康障害防止対策
  10. 物理的要因による健康障害防止対策
  11. 生物的要因による健康障害防止対策
  12. 作業負荷の評価と改善対策
  13. 特殊健康診断の評価と改善対策
  14. 一般健康診断等の実施
  15. 健康診断の事後措置
  16. メンタルヘルス対策 (ストレスチェック対応などを含む)
  17. 過重労働対策
  18. 職場復帰支援 (両立支援等を含む)
  19. 健康教育・健康の保持増進対策
  20. 特性(母性、高齢者等)に応じた健康管理
  21. 救急・緊急対策
  22. 快適職場の形成及び福利厚生施設の衛生管理
  23. 健康情報・産業保健活動の記録と管理
  24. 安全・環境管理
  25. 労働衛生関連法令の遵守
  26. 産業医学分野での調査研究
  27. 産業医倫理の理解と実践

以上の各項目について所定の書式に応じたレポートを1件以上履修することとする。
(レポートは、随時日本産業衛生学会専門委員会事務局に指導医のコメントと署名を添えてPDFファイルとして>メール添付にて送付して下さい。)

(2) 研修方法

研修の方法には、以下の2つの選択肢が用意されている。

一.施設連携型:
指導医の下で、すべての研修分野の研修を施設内で行う、または、おもに研修協力施設内で研修を行い、 施設内で経験できない研修分野について研修計画で指定された他の研修施設や研修協力施設で、複数の指導医による研修を組み合わせて行う方法
二.計画型:
産業衛生教育・情報提供型施設の指導医によって立案された研修計画に基づき、主に研修計画で指定された研修施設や研修協力施設において研修を行う方法

(3) 研修施設の分類

①産業衛生サービス実施型施設:
企業又は事業場、国又は都道府県労働局が認可した労働衛生機関、医療機関などの付属健診施設
②産業衛生教育・情報提供型施設:
医育機関の産業衛生関連講座・研究室等、労働衛生研究機関、都道府県産業保健総合支援センター
③研修協力施設
専攻医が所属する事業場が研修施設になっていない場合、指導医と契約し、 所属事業場を研修協力施設として登録した上で、研修を実施する。

(4) 研修方法の一例

まず、専攻医は指導医と話し合い、項目ごとに専門医試験まで研修計画を立てる必要がある。 専攻医は、研修施設の指導医と研修開始にあたり研修内容について検討を行ない、研修項目ごとに、 研修場所および研修内容についての計画を作成する為の面談を実施し所定の様式に記録を残すこと。 特に研修協力施設にて研修を行う場合(指導医が研修先に在籍していない場合)には、初回面談の記録を残すこと。 主となる指導医が変更になった場合にも記入すること。
専攻医は、前述の産業医実務研修の履修すべき27項目について所定の書式に応じたレポートを記入し、指導医の確認を受ける。 その際、複数の指導医がいる場合には、項目ごとに確認を受けてもよい。 レポートは、随時日本産業衛生学会専門委員会事務局に指導医のコメントと署名を添えてPDFファイルとして>メール添付にて送付して下さい。 その他研修の記録は、専門医制度のホームページから様式をダウンロードし、電子ファイルとして記録して自己保存する。
専攻医は、1年ごとに産業医実務能力の向上に関する自己評価を行うとともに、 9単位以上の実務修練期間後に 産業医実務能力に関する自己評価 (総合・最終年)を所定様式に記入し、指導医(複数の指導医がいる場合には主指導医)の確認を受ける。 自己評価などの所定様式は専門医制度のホームページからダウンロードし、 電子ファイルとして記録して自己保存する。 最終年の総合評価に基づき産業医実務能力が専門医試験の受験時の要求基準(必須項目が1人でできるレベル) に到達しているとの確認を受けた場合に産業医実務修練は修了となる。
産業医実務修練が修了した場合であっても、1年以内に専門医試験を受験しない場合や専門医試験に不合格であった場合は、専攻医名簿への登録を維持しなければならない。

(5) 産業保健に関する研究

専門医として担当する職場で発生した労働者の健康に関する問題を認識し、原因や関係する要因を分析し、 解決の方策を考える能力を養うために、産業保健に関する研究実績が専門医試験の受験資格要件に含まれている。
研究内容はできるだけ産業現場における事象であることが望ましい。 その成果の公表は、受験前5年以内(産業医実務研修期間以外でもよい)に、以下のいずれかを満たしていることが必要である。
  • 日本産業衛生学会(総会)又は産業医・産業看護全国協議会で第1発表者として1演題、 もしくは地方会において第1発表者として2演題以上の実績があること
  • 日本産業衛生学会誌又はJournal of Occupational Health又はEnvironmental and Occupational Health Practiceで第一著者として1論文以上の実績があること
  • 日本産業衛生学会ホームページに良好実践事例(GPS)を第一著者として1例以上発表していること